はじめに
2023年にカクヨムによって投稿された作品で、同年8月30日に書籍化デビューを果たしまた。そして2025年には映画化がなされるほどの反響を呼んだ作品です。この作品は、単行本、映画、そして文庫本で内容や結末が異なります。しかし今回は、その中の一つである文庫本について紹介しようと思います。若干のネタバレはご了承ください。まずは簡単なあらすじを本書に即して説明します。
本書の編集を手掛けた小澤雄也は、都内の出版社で編集の職を生業としていています。彼は。失踪した古き知人、瀬野千尋の助力もありながら「近畿地方のある場所」に関連する猥雑なテキストを本書に収め刊行しました。ではなぜ彼はこのような文章群を発表するに至ったのでしょうか。それは彼がある人物を探しているからです。その人物についての情報をお持ちの方はご連絡ください。
曖昧さが生み出す不気味さ
この作品は、どこかふわふわとした感覚を持つ作品だと思います。その理由は、一貫して近畿地方のある場所もしくは●●●●●という名前で物語が進んでいくからです。それは、読者に興味を引く行為であるとともに不気味さを作り出す装置として機能していると思います。もちろん、なぜ小澤がある人物を探したのか、千尋の失踪の謎などは明かされては行きますが、ラストシーンで畳みかけるような作りだと感じました。最後まで見えない作りや曖昧さを残して締めた魅力があるのではないでしょうか。
本書の大半を構成するモダン的なテキスト
モダン的ばテキストすなわち雑誌記事・ネットの掲示板・インタビューのテープ起こし・手紙によって大半が構成されているのは他の作品と違う要素ではないでしょうか。しかもどれも現代のメディアとして存在しており単なるフィクションに留まらせないリアリティを持つ作品であるとも感じました。またストーリーはあるものの、それに関する話の登場はあまり多くありません。もしかしたらストーリーとしてではなく小さな怪談を集めた短編集と言ったほうがいいのかもしれません。しかし、その小さな怪談はどこかつながっているようであり、結果的には怪談集としては読めない不思議な感覚に陥ります。ラストにつながりゆく怪談を集める中で鮮明さを増す事実に、我々は身の毛がよだつような思いにさせられます。
未確認生物や常軌を逸するコトバ
ましろさん、赤い女、ジャンプする女、ホワイトマン、「かきがあるよ」、「ましらしこえりぶついてとみず」など、多くの未確認生物や常軌を逸するコトバはホラーの要素を強めています。オカルト好きには堪りませんが…
まとめ
ここまで『近畿地方のある場所について』の作品の感想を述べていきました。曖昧さやフィクションに留まらせないリアリティ、狂気を帯びた生物やコトバはやはり目を見張るものがあります。時代を反映した新たなホラー小説としての魅力がある作品でした。ちなみに、自分が一番怖いなという怪談話が「新種UMA ホワイトマンを発見!」です。みなさんは何の怪談話が好きですか?


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