『汝、星のごとく』を読んだ感想と考察

作品紹介

初めに

本作は、瀬戸内海の小さな島・青島と東京を往復する形で展開される、暁海と櫂の長年にわたる恋愛と成長の軌跡を描いた物語です。2021年に凪良ゆうによって書かれ、2023年に本屋大賞1位を受賞し、さらに2025年にはシリーズ累計100万部を突破した人気作品となっています。2026年には映画化も決定されています。本記事では、そんな『汝、星のごとく』を紹介していこうと思います。ネタバレを多く含みますのでご了承ください。

感想

いい意味での人間らしさ

私はこの作品の面白さは、まず人間らしさにあるのではないかと思いました。櫂は瀬戸内の中にいるときは、暁海に一途でまっすぐ向き合う恋をしていましたが、上京すると次第に島にいたころの自分が薄れ、暁海との間にも隔たりができるようになります。さらに櫂が書いた漫画は急速に売れ始め、櫂の元にはお金はもちろん、女や名誉までも手に入れられるようになります。しかし、それが暁海という古びた存在を二の次にしてしまいます。天狗になっていたという表現がまさにそれです。一方の暁海は、櫂が上京しても島に残り、就職して母の世話もこなす毎日でした。瞳子さんに刺繍を教わってはいましたが、大きな成功には繋がらず、彼女の人生は淡々としていました。櫂に接する態度は島といたころとあまり変わらなかったのですが、それが変わっていく櫂とのギャップを生むことになります。彼女は櫂の無鉄砲に遊び惚ける姿に疑念を呈します。しかし彼女は別れることを恐れ、彼の浮気を見過ごしずるずる付き合っていきます。変わらない自分が情けなく、そして別れを告げられない彼女は自分を惨めに思います。

私は櫂と暁海の2人を通して、人間の傲慢さと弱さが描かれていると感じました。成功を収めることで、古いものを捨て去るのも、変わるものと比較し変わらない自分に苛立ちを覚えるのも、人間を忠実に再現したものであり、極めて現代的と言えるのではないでしょうか。

暁海と櫂の2視点構成と成長物語

一般的な小説は、やはり主人公の視点がメインとなりある一定の期間で物語が進んでいきます。しかし、この作品は暁海と櫂の二視点によって構成されており、さらにそこに高校生から大人になるまで、年齢や季節の移ろいによって設けられた見出しによって区切られ、成長が描かれています。私たち読者は二つの視点から物語を見ることができ、それがさらに暁海と櫂のすれ違いという重要なストーリーに入り込むことができます。そして、高校生から30過ぎになるまでの長い恋物語も同時に進んでいくため、ラストシーンの言葉を強くさせます。もし、これが櫂のみの視点で語られていたら、年齢や季節ではない単なる物語のシーンの移り変わりのみで区切られていたら、ラストシーンの儚さは強くでなかったのではと感じました。

キャラクターの面白さ

北原先生や瞳子さん、櫂のお母さんなど最後まで彼らの人生に関わってくるキャラクターはどれも個性的でおもしろいです。一人ひとりが狂気を持ち、しかしどこか信念をもっているのが魅力的です。暁海と櫂の存在だけで終わらせないのもまた一興です。

まとめ

私はさすが本屋大賞を取っただけあるなと思いました。作品の中身はもちろんですが、「あなたと生きる、その痛みごと」というキャッチコピーはかなり好きですし、この作品を表したベストな表現だと思います。またラストシーンは、それまで登場しなかったタイトルの意味が回収され、電流が走るような感覚を覚えました。感動的で儚さの中にある美しさを求めているかたにはぴったりの小説です。ぜひ一度本書を手に取ってはいかがでしょうか。

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